「リユース」プロジェクト
2015年の国連サミット以来、その取り組みが企業の重要な使命と認識されるようになったSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)。遠鉄グループでもSDGsを意識した取り組みが推進される一方で、社員一人一人の意識はどこまで変わることができているのだろうか。今回は、社員やそのご家族も参加できるSDGs取り組みを一から考え、「持続可能」の在り方を追求した新しいチャレンジ「リユースプロジェクト」に注目した。

SDGsの取り組みを企業文化として醸成し、
発信していくための第一歩です(千賀)

─── プロジェクトの概要と発足の背景をお聞かせください。

千賀:「リユースプロジェクトは、遠鉄グループのSDGsの取り組みとして企画されたもので、使わなくなった学校制服や学用品を遠鉄グループ内で譲り合えるよう、リユースのマッチングアプリを開発し、日報便(グループ間で文書や小包など荷物のやり取りを行うときに利用する便)を活用してリユース品の受け渡しができるようにしようというものです。
今回のプロジェクトは、世の中のSDGsへの関心が高まる中、遠鉄グループ内のSDGsの企業文化を醸成するため、まずは経営企画部から遠鉄グループ全体に発信していこうという取り組みの第一歩として企画されました。もう一方では、2024~2026年度の中期経営計画や丸山社長のメッセージにもあったように、チャレンジすべき課題や新しい取り組みのアイデアがあれば、迷わず挑戦していこうという方針と結びついたものです」

竹内:「また従業員の家計支援という、福利厚生の意味合いも多分に含んでの立ち上げでした」

─── プロジェクト発足からサービス開始までの期間は?

千賀:「2023年の11月21日にキックオフミーティングをして、2月1日にはサービスを開始しましたので、かなり早く進められたと思います」

小久保:「プロジェクトメンバーとして経営企画課、ICT推進課、営業推進課の3課から1名ずつが集まり、千賀さんがプロジェクトの進行役、竹内さんが仕組みづくり、私は広報と、役割分担ができていたので進めやすかったですね。それでいて、仕組みづくりや運営方法については3人で意見を出し合いながら進めていけたのも良かったと思います」

─── 学校制服・学用品リユースの仕組みとは?

千賀:「サービスの流れとしては、まず制服や学用品を譲りたい人がアプリを利用して出品フォームに登録をします。制服を譲ってほしい人は、アプリから閲覧し、欲しいものが見つかったら希望登録をすると マッチングが成立します。リユース品の受け渡しには、日報便を活用しています。出品者から事務局に届いたリユース品を確認したら、事務局から譲ってほしい人に受け渡し、えんてつポイントを進呈しています。出品者と受け取る方が直接やり取りすることはありません」

竹内:「日報便では送ることのできない大きな商品については、本社までお持ち込み、お受け取りをお願いしています。これまでに制服以外にも、鍵盤ハーモニカや算数セットといった学用品、参考書などもご登録いただいています。今のところ一番大きい物は勉強机でしたね」

小久保:「成長期のお子様は身長がどんどん伸びてしまい、入学時に買った制服がすぐに着られなくなったという話も伺いました。学校やサイズなど実際にマッチングしてみないとわからないところもありますが、選択肢の一つとして遠鉄のマッチングサービスを利用してもらえたらと思います」

リユースに関わる全ての人が無理なく参加でき、
かつ利用しやすい仕組みを考える必要がありました(竹内)

─── 今回、チャレンジした点とは?

竹内:「アプリ開発自体よりもどんなやり取りでマッチングを行うのか、どうやって受け渡しをするのかといった仕組みやルートを考えることの方が大変でした」

千賀:「そもそも最初はリユース品を回収して、どこかの会場をおさえて譲渡会を開催すれば一番楽でわかりやすいという話でしたね。おそらく上司も普通の譲渡会を想定していたと思います」

竹内:「ただそれでは、譲渡会当日までのリユース品の管理や駐車場の確保など、さまざまな問題が発生します。また、一回限りの譲渡会ではなく、継続的な取り組みにしようとすると、さらに実現のハードルは上がってしまいます」

千賀:「回収方法も悩みましたね。当初は浜松市内の各所に店舗を構える遠鉄ストアへリユース品を持ち込んでいただいて、それを私たちが回収するという案も出ていました。ただそうなると、持続可能という部分で無理が出てきますよね」

─── 仕組み自体が「持続可能」でなければ、どんなに良い取り組みでも長続きしないということですね?

竹内:「そうです。そもそもこういった取り組みは継続することに意味があるので。そこで私たちを含め、リユースに関わる全ての人が無理なく参加でき、かつ利用しやすい仕組みを考える必要がありました。アプリ開発の参考にしたのは、大手フリマアプリの〈メルカリ〉や、中古品や求人情報などが無料で掲載できる〈ジモティ―〉、〈学生服リユースshopさくらや〉です。ただ、リサーチはできても、何でも我々のプロジェクトにそのまま反映できるわけではありません。例えば、〈学生服リユースshopさくらや〉では、リユース品の学校に通う予定の人と既に通っている人のために販売しているので、それ以外の目的の方に制服が渡らないための対策を取っています。今回のプロジェクトでも同様の対策は必要ですが、全く同じ手法を我々のプロジェクトに当てはめることはできません。安心して出品していただくための仕組みを自分たちで考えるといったところは悩みました」

グループ全体の理解と協力が何より大事です(小久保)

─── このプロジェクトを成功させるために必要なこととは?

小久保:「グループ全体の理解と協力が何より大事ですね。ポイント進呈は全て会社負担ですし、日報便を利用するにも、各方面に仕事を負担していただくことになります」

竹内:「結局そこは、グループ間同士の助け合い、SDGsの取り組みという視点でご協力いただいているので、このプロジェクトをグループ内に周知し、理解を得ることは大切になってきますね」

千賀:「そうですね。私は今回プロジェクトのリーダーとして、経営層の方々にプロジェクトへのご協力のお願いをさせていただきましたが、経営層の方々はSDGsやサステナビリティの取り組みに対して意識が高く、反対の声は一切ありませんでした。むしろぜひやってみたらいいと後押ししてくださる方ばかりでした。そういったお声がけをいただいたことで、改めていい会社だなと思いましたね」

─── この取り組みを広めるための今後の展開は?

千賀:「今アイデアとして出ているのは、グループ納涼祭での譲渡会イベントの開催です。ここでは制服や学用品ではなく、子ども服やおもちゃなど、子ども用品のリユース品の譲渡会を開催することで、中高生の保護者だけでなく、全世代の方に広く知っていただく機会にしたいと思います」

小久保:「ターゲットも従業員の方というより、そのご家族に向けて発信していかないとなかなか広がらないですよね。今後は従業員家族にも案内ができるDM(ファミリーメール)やLINEの活用、イベントの開催など、従業員のご家族との接点を強化していけたらと思います」

皆さんが潜在的に持っていたやりたいことを、実現できる機会をつくれたことがうれしい(千賀)

─── このプロジェクトを通じて得たこととは?

小久保:「今回のプロジェクトでは、アイデアを出して企画する段階から、どうやって課題を解決し、実際に仕組み化して運用していくかといった一連の流れを経験できたことが大きな収穫でした。「これいいよね」と言うだけじゃ何も始まらないですし、アイデアを実現する方法を考えることが大事。それを一つカタチにできたことが自分の自信になったと思っています」

千賀:「私は所属が経営企画課なので、普段から企画を考えるのが仕事ですが、それでも裁量権を持ってプロジェクトの進行を任されたのはこの時が初めてでした。またプロジェクトの責任者という立場で各方面に承認を得るといった経験はこれまで一切したことがないですから良い経験になりました」

竹内:「今回は『持続可能な取り組み』という意味で、新しいチャレンジだったと思います。私自身は、普段、案件ごとに私たち対1つの会社という1対1の関係で仕事を進めていましたが、今回は私たち対グループ全体でしたので、どの会社にも受け入れてもらえるような広い視野を持って物事を考えるといった課題を与えていただいたのは本当に貴重な機会だと思っています。また私は他のお二人より年齢が上ですし、子育ての経験もあるので、利用する側の視点で意見を出せる立ち位置で参加させていただけたのもよかったと思います」

小久保:「今回やってみて、SDGsの取り組みの重要性を実感できたことも大きな収穫だと思います。このリリースを出した後に、従業員の奥様から子ども3人分の学用品の処分に困っていたという連絡を受けました。もう使わないけれど思い出が詰まっているし、新品で買ったまま使っていない物もありもったいない、この機会を用意してくれて本当に良かった、どうやったら出品できますかという内容でした。サービスを開始したものの、全く使われなかったらどうしようという不安がありましたので、すごくほっとしてお二人にすぐ報告しました」

千賀:「実際、世間でSDGsという言葉が浸透してきてはおりますが、個人レベルではSDGsへの取り組みがしたくても何から実践すればよいのか分からない方々もいると思います。私もそういった思いをもっておりました。今回このプロジェクトを通じて皆さんが潜在的に持っていたやりたいことを実現できる機会をつくれたというのが、個人的に一番うれしかったですね」

千賀健斗
経営企画部経営企画課
入社年/2015年

住宅事業部住宅企画課、住宅営業課にて注文住宅営業、分譲住宅営業、商品企画を経験。現在は経営企画部経営企画課にてグループ会社の経営支援、グループ各社の経営管理、グループ不動産の管理・活用、関係会社賃貸、プレスリリース関連、機関会議の運営等を担当している。

竹内秀子
経営企画部ICT推進課
入社年/1991年

結婚後一度退社し、2015年に再入社。運輸事業部、人事部人材開発課、経営企画部営業推進課などを経て、現在は経営企画部ICT推進課にてシステム開発、各種研修開催、グループ会社案件相談受付を担当。デジタル技術を活用してグループ全体の課題解決に取り組んでいる。

小久保麻優
経営企画部営業推進課
入社年/2023年

他県の同業他社広告部門で勤務。2023年に地元浜松へ戻り遠州鉄道に入社。現在は経営企画部営業推進課にて交通広告、看板、WEB広告などあらゆる広告媒体を用いて幅広い広告プロモーションを提案している。

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