Leader's Interview
プロジェクトメンバーが、現在の進捗や将来の目標、
プロジェクトにかける想いを語ります。
Leader's Interview
プロジェクトメンバーが、現在の進捗や将来の目標、
プロジェクトにかける想いを語ります。
─── それでは、プロジェクト発足の背景から伺います。
山内:「遠州鉄道株式会社は、誕生してから70年にわたって、社名に表すように遠州地方すなわち静岡県西部地域を事業エリアとして発展してきた歴史を持っています。エリアを拡大するよりも、地元へのサービスの密度と多様性に力を入れてきたと言ってもいいでしょう。でも最近の当社は、努めて遠州地方の外にも目を向けています。2年前から始まっているインバウンドプロジェクト(※リンク)もそうですし、ASEAN研修制度ではインターンシップまで行っています。NEOPASA浜松(サービスエリア)における商業展開(※)でも、プロジェクトメンバーの視線は高速道路でつながる『県外・圏外』に向いていましたよね」
(※)NEOPASA浜松 遠鉄マルシェ店
大城:「その一連の流れの中に『豊川プロジェクト』があるというのは確かでしょうね」
山内:「遠鉄グループの経営理念は『地域とともに歩む 総合生活産業として 社会に貢献する』こと。ただ、その『地域』とは、そもそも遠州地方だけを指していない。私たちがサービス可能なエリアすべてを指しているんです」
大城:「現実面では経済環境が大きく変わっていく中で、この先、特定の地域だけで展開するビジネスには限界があります。そこで近隣で最も人口の集中している東三河エリアへの進出は、ある意味自然だったんですね」
─── 大城さんは遠鉄百貨店からこのプロジェクトに入られたそうですね。
大城:「当時、僕は遠鉄百貨店営業推進部で営業戦略チームに所属していました。プロモーションやイベントを企画して売り場を盛り上げていく役目です」
山内:「今回の異動では、社長室に呼び出されたとか」
大城:「いつもなら、辞令はたいてい所属長から知らされるんです。でもその時に限って、社長室に来るように言われて。先輩たちからは『これはただごとじゃないぞ』とからかい半分に脅かされて、自分にとって入社以来の大きな異動になるんだろうな、と覚悟して社長室の扉を開きました(笑)」
─── プロジェクトの話はそこで初めて聞いたのでしょうか?
大城:「ええ、そうです。続いて記念すべき県外初の出店だ、大いに奮闘してきなさいと、社長直々に激励をいただきました。これは大仕事なんだなと察しはしましたが、まだ仕事の概要もわかっていなかったこともあって、未知への挑戦に胸を躍らせていましたね」
山内:「ただ、僕らを待っていたのはそんな甘いものではなかったんですけれどね(笑)」
─── 豊川プロジェクトに先駆けること1年前、遠鉄ストアでは最も東に位置する『遠鉄ストア菊川店』がオープンしています。このプロジェクトでは、地域の方々における親近感の差が、チラシの効果からテナント交渉までさまざまな影響を与えたと聞きました。
山内:「もちろん、この豊川プロジェクトでも地元の方々に受け入れていただくには時間と困難を伴うだろうと、誰もが覚悟していたんですよ。ですが、マーケティング調査とPRのために豊川市に足を運んで間もなく、そんな生易しいものではないことがわかってきた」
大城:「浜松からの距離だけでいうと、豊川市と菊川市にそれほど差はありません。しかし、私たちにとっても豊川市が遠く感じられるのは事実です。それにしても遠州鉄道はここまで知られていないものなのか、と正直驚くほどだったんですよ。遠鉄百貨店がなんとか知られているくらいなんですね、それも単独で」
山内:「かろうじて浜名湖パルパルの名前が出てきても、遠鉄グループだということは誰も知らない。個人的には、これまでも『まちなか活性化プロジェクト』などの前例のない取り組みを通じて、懐疑的な方々を根気よく説得して協力を得たり、地域住民を巻き込んで新しいイベントを仕掛けたりと、未知の分野で揉まれてきた自負がありました。でも、その当時は何もかもが手探りの中、身一つで挑んだような気持ちでいましたが、実際には『遠州鉄道』のネームバリューに助けられていたことを思い知らされたようでしたね」
山内:「このままではいけない。本社に戻るとすぐに関係者を集めて、上層部にも包み隠さず現状を伝えました。この危機感を共有し、必要とされる措置を整えるためです」
大城:「とにかく原点からの活動を恐れず、地域の方へのヒアリングを通して、何が求められているのかを洗い出す作業に徹しました。そこで僕たちを大いに助けてくれたのが、他でもないグループ総合力だったんです。交通や販売、レジャーといったBtoCビジネスではほとんど実績がなくても、保険事業部をはじめ、グループ各社が豊川・豊橋に多くの顧客企業を持っていました。そういった企業を通じて、主に女性従業員や社員の家族−−すなわちターゲット層の声を集めていったのです。その結果、出店予定地の消費者の傾向がだんだんと浮かび上がってきました」
山内:「銀行などの協力も得られ、訪問した企業は100社以上に及びました。それらの企業に勤める従業員やそのご家族の方々に、遠鉄ストアや遠鉄グループを紹介しながら、リサーチを進めていったわけです。遠鉄ストア豊川店の予定地は、一般的にスーパーの商圏とされている半径2km以内に、大型スーパー4軒がひしめく激戦区です。しかも数百mほど半径を広げると、ナショナルチェーンを含む2店舗がさらに追加されます。浜松と同じく車での移動が多い土地柄ですので、数百m程度の距離は問題じゃありません」
大城:「地元で非常に知名度の高いスーパー、これが競合の筆頭。そして遠鉄ストアと同じように幅広い品揃えを特徴とする店や、価格帯で強みを打ち出す店、一通り揃っている。そこに我々は何を武器として乗りこんでいくべきか。お客様は何を求めているのか。ヒアリングで得られた声は、この上なく貴重なものになりました」
─── 手元の資料によると、プロジェクトの目的は「(1)東三河エリアでの遠鉄ストアと遠鉄グループの認知度アップ (2)えんてつカード新規会員獲得」とあります。
大城:「遠鉄ストアは、遠鉄グループの中でも地域の方々にもっとも身近な事業のひとつですし、えんてつカードは遠鉄グループ全体を結ぶ重要な戦略ツールです。その成功を本社から支援しようということです。ただし豊川の場合は、ほぼゼロからのスタートですから、PRをするにしてもカードが先かストアが先かということになりますので、そこには工夫が必要でした」
山内:「手前味噌な話ですが、えんてつカードはその還元率の高さと提携店の多さで一線を画す存在です。県西部エリアで会員数約53万人というインパクトもある。このえんてつカードをストアのPR材料として活用しつつ、早期から長期にわたる顧客の囲い込み策として活用したい。豊川でのえんてつカードの初期普及率は、遠鉄グループが受け入れられるかどうかの試金石ともいえるでしょう」
─── 大城さんのおっしゃる「工夫」とは何ですか?
大城:「このように僕たちはえんてつカードに自信を持っているのですが、初めて目にする豊川の方々にとって、まだオープンしていないお店やなじみのないサービスで便利だといっても、それを魅力に感じるのは難しい。遠鉄ストアがオープンするまでに、豊川のお客様に『いいなあ』と思っていただく何かを用意する。それが喫緊の課題だったんです」
山内:「そこで重点的に取り組んだのが、『今』豊川市にあるお店で使えるクーポンを、えんてつカード入会特典としてプレゼントするキャンペーンです。いわゆるお買い物ポイントカードではあまり例がなく難航もしましたが、最終的には豊川市を中心とする39社83店舗、地元でメジャーなお店や全国展開するブランドにもご協力いただけました」
大城:「お互いに利益がなければ協力は得られませんので、来店促進など提携のメリットについて時間をかけて話し合ったこともあります。でも、こうしてできた人と人のつながりが、大きなムーブメントとなっていくのを体験できましたし、それが自分の中でさらに熱い気持ちを育てていったのは、得難い経験でした。結果として、えんてつカードは目標入会件数だった1万件を、遠鉄ストアオープンの1週間後という予想を上回る早さで達成してしまうほど反響が大きく、豊川店のオープンに向けていい風が吹いてきたなという実感がありましたね」
─── 現在(取材時)、遠鉄ストア豊川店がオープンして4週間が経過しました。状況はいかがですか?
山内:「プロジェクトの進捗率は、100%を大きく超えています。オープン日の売上記録で過去最高を記録したのを皮切りに、えんてつカードの会員獲得も順調で、予想を大きく上回る右肩上がりのカーブを描いています」
大城:「とはいえ、新規開店という熱が冷めても話題性を確保するためには、華のある企画が不可欠ですので、先週末には遠鉄百貨店とコラボして『デパ地下スウィーツ特別販売』という豊川店限定のイベントを行いました。この企画は僕が百貨店出身だからではなく、遠鉄ストアの主な顧客層である主婦たちが『+α』で欲しいものは何かという、事前ヒアリングに素直に耳を傾けた結果です。常道のアプローチですが、結果として遠鉄グループらしい企画になりました。イベント当日は開店前からデパ地下スウィーツを目指して多くのお客様にご来店いただき、用意したスウィーツがすべて完売するほど好評でした」
山内:「意外でしたが、豊川市にはデパートがなく、あまり身近な存在ではないようなんですね。一番近い大規模な商業地域は、岡崎や名古屋なんです」
大城:「ですから今回のデパ地下スウィーツは遠鉄グループならではのコラボ企画で、地域の競合に対する明確な差別化ポイントになり得たと考えています。まだ遠鉄ストアのブランドイメージも固まっていないでしょうから、将来にわたる大きなアドバンテージを築いてくれるのではないかと期待しています」
─── そんな順風満帆のプロジェクトですが、もう間もなく解散とか……。
山内:「当初は来年の3月末までの計画を立てていたのですが、順調なスタートを切れたので……(笑)」
─── 寂しさはありませんか。
山内:「実を言うと、大城は営業推進課で、引き続き豊川店をサポートする予定なんです」
大城:「豊川店を含んだ、遠鉄ストア事業をグループの視点から支援するということですね。これからは豊川店だけを見るわけにはいきませんが、その分もっとグループと連携したダイナミックな動きが提案できるんじゃないかと楽しみにしています」
山内:「私自身も経営企画部に異動するので、これまでとは違った視点から遠鉄ストアの経営を応援していくことになると思います。つまり、二人とも豊川店との縁は続くというわけで、だからあまり寂しさはありませんね」
─── このプロジェクトは、お二人のこれからにとってもマイルストーンになりそうです。
山内:「今はまだ、遠鉄ストア豊川店は32番目の遠鉄ストアでしかないと思うんですよ。ただ、『遠鉄グループにとって』の豊川店の成功は、無限のチャンスを引き出す可能性を秘めている。直線距離でいえば、豊川は菊川と対して変わらない。なのに県をまたぐからか、浜松と豊川の間には距離を超えた隔たりがあるように思うんです。遠鉄グループの各企業にしても、まだ豊川が大きなチャンスのある地域と見ているところは少ないのではないでしょうか」
大城:「遠鉄グループ各企業に対して豊川や東三河を重要な地域であると認識させられるかどうかは、豊川店が成功し、その後にどんなサービスを展開させられるかにあります。立場は変わっても、僕の中での豊川プロジェクトは、もっと大きな意味を持ちながら続いていくでしょうね」
山内:「このプロジェクトでは、遠鉄グループの一社員として大きな教訓を得ました。日々どれだけ遠鉄グループのネームバリューに助けられているか、私たちはそれを常に自覚していなければならないということです。その一方で、これまでの実直・愚直なサービス姿勢が間違っていないと証明されたことは、次の挑戦につながる大きな自信になりましたね」
山内大輔
営業推進部 豊川プロジェクト 副課長
入社年/2000年
(※現在は遠鉄システムサービス)
営業推進課の副課長として、グループ各社の情報共有の促進や人的交流の活性化など連携強化に力を入れてきた。「まちなか活性化プロジェクト」の一員として、市や商工会と一丸となりさまざまな取り組みを行ってきた経歴を持つ。
大城泰崇
営業推進部 豊川プロジェクト 副課長
入社年/2001年
(※現在は遠鉄百貨店)
遠鉄百貨店に入社して婦人服売場などを担当した後、プロモーションやイベントを企画する営業推進部を経て遠州鉄道に出向。遠鉄百貨店で培った経験やつながりが、豊川プロジェクトでは大いに生かされたと語る。
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